最近の中国建設市場
日本の経済発展を支える国、それが中国です。今回は、一般的に知られている中国を紹介するだけでなく、道路舗装業界の現状と酒井重工業の取り組みについても取り上げたいと思います。
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片側3車線で整備された幹線道路
急速に展開するインフラ整備
さて、中国といえば広大な土地と、あり余る人口のイメージがつきものです。人口は約13億人で日本の約10倍、面積は960万km²と、日本の26倍の広さです。世界の最高峰チョモランマや世界の大河、黄河・長江を抱えるほか、土地形態も砂漠、草原、森林など複雑で多様な変化に富んでいます。
このような広大な土地を統括する為に、中国では、地方行政区分が発達しています。基本的には、省級、地方級、県級、郷級に分類され、一級地方行政機関は23省、5自治区、4管轄市(北京、天津、上海、重慶)、2特別行政区(香港、マカオ)に分かれており、これが日本の都道府県に当たります。日本人観光客が多く訪れる北京、上海、香港などは、東部行政地区に当たり、特に経済の発展が著しい地域です。
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急ピッチで進められる舗装工事
我々が中国に進出し、成果を上げるためには、道路状況を把握し、施行形態等を知らなければなりません。
今年2月に公式発表された第15次5カ年計画によると、新たに28万キロの新設道路(うち高速道路は2.5~3.5万キロ)を建設し、総延長195万キロを目指すとしています。
また、2010年までに総延長を230万キロ(うち高速道路は20万キロ)まで延長する計画もあるそうです。これは、年平均5.6万キロの新設道路建設に相当します。
2003年ローラ需要13000台に/米国をはるかにしのぐ勢い
特殊舗装も徐々に増加
このような建設整備を行うために、中国では、建設機械をはじめとした多くの外国資本が投入されています。
2003年には、約15万台の建設機械が販売されました。台数の多い順にホイールローダ、油圧ショベル、締固め機械、移動式クレーン、ブルドーザ、ミニショベルとなります。この主要6機種で全体の96%を占め、合計の台数では4年間で約4倍に増加しています。
また、当社に関係するローラの需要では、2003年度で1万3000台に達しています。米国の需要がほぼ年間5000~6000台ですから、台数ベースでは、はるかに米国をしのいでいることになります。
ここにきて中国政府による金融引き締めの影響で多少勢いは落ちてはいるものの、2008年の北京オリンピックや、2010年の上海万博を控え、インフラの整備に関しては、今後も国を挙げて取り組んでいくものと思われます。
道路構造は、路床から表層まで日本(世界)と同様の構造で、1級~4級のクラス分けを行っています。また、特殊舗装である排水性舗装やSmA(砕石マスチックアスファルト)も徐々に増加しているようです。
小型機械の需要も急増
道路建設に使用される建設機械としては、大陸的な風土と大規模施工のためか、超大型の機械が主流となっています。例えば、アスファルトフィニッシャー:9~12m、土工用振動ローラ:18t以上、タイヤローラ:25t以上といった感じです。当然これには効率的な施工を行って工期短縮を図る意図もありますが、いずれにしても大型のものを好む傾向があり、大陸国家である米国と事情が似ています。当社が供給しているローラもSW850という12tクラスの舗装用振動ローラが主流となっている点でも共通しているといえます。
一方で、市街地などは、日本に代表されるアジア的な狭い道路も多いことや、初期に建設された道路の施工品質が悪く、これらの補修工事が急速に増えつつあるという現状もあります。
従って、最近の傾向としては、大型機械に加え、切削機や小型振動ローラ、プレートコンパクタ、ランマなどの需要も急増しています。
また、現在日本がそうであるように舗装の施工仕様に応じた機械選択を行う傾向もあります。平坦性などを重視し、温度管理が厳しい排水性舗装等には水平振動ローラを使用したり、施工の多様化も進んできているようです。
欧米や日本に比べると質、量ともにまだ初期段階といえますが、今後急速にこのような施工工事が増えてくるものと予想されます。
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SAKAIの上海工場全景
最後に、中国における道路建設需要に応えるべく、酒井重工業では、この6月、上海に海外第三番目の工場を稼働させました。
この上海工場は、上海市の西部・嘉定工業区というところにあり42,000m²の敷地に3,300m²ほどの組立工場と、約2,000m²の事務所からなっています。
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ローラの生産が進む工場内部
現在SW850の1機種の生産を行っておりますが、今後、中国市場の変化に合わせ、生産機種の多様化と生産量の拡大を計画しています。上海市内から車で約30分の所ですが、広々とした美しい緑の環境の中にあります。上海にお越しの際は、是非一度お立ち寄りください。
<事業推進部:後藤>
(株)工組様青森県十和田市
今回は、青森県十和田市の(株)工組様をご紹介致します。(株)工組様は弊社の古いユーザーであり、貴重で歴史的なローラも所有されています。
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(株)工組様の本社社屋
総合建設業の施工請負を行っておられる(株)工組様は、昭和31年に創業され、昭和38年1月10日に株式会社に改組、現在に至ります。
(株)工組様は、昭和40年から舗装工事を手掛けられるようになりましたが、当時は転圧機械の種類も少ない中、夏場の表層舗設時における平坦性向上を図るとともに、多機能に使用できる新機能のローラを模索しておられました。
そして、当時の締固め機械製造会社の営業面々に、舗装の平坦性と仕上がりを向上させるために、機動性に優れたコンバインド型ローラを開発できないかと、仕様形式やアイデア等を提案されておられました。
中野渡社長-舗装の品質アップへ
機械メーカーに自らが要求性能など提案
そこで、当社では昭和47年に中野渡社長様が要望されていた性能に近いローラを開発し、同48年には、開発したローラをぜひ見て頂きたいと申し入れ、当社の本社へと出向いて頂きました。その結果、社長様の思惑に合致した機能を備えたローラである事を確認、その場で購入を決定して頂きました。
そのときのローラが、今回ご紹介いたしますコンバインドローラ、TC6709です。
この機種の特徴は、当時としてはタイヤローラとロードローラを組み合わせた画期的なもので、1台で2機種分の働きをするローラでした。
タイヤローラの車両中央部に鉄輪を装備したタイプで、鉄輪が右側にシフトおよびリフトすることができるため、路肩、路側を安全確実に施工できる機械でした。
当時は、表層施工時に最後の仕上げ転圧機械として使用していたようで、転圧性能としては、高品質の平坦性を得ることができるとともに、夏場の表層施工時には過転圧防止およびローラマークの解消に効果を発揮していました。
その他にも、コンバインドローラの機動性を生かし、舗装修繕工事の転圧機械として活躍していましたし、機体中央部にある鉄輪部分のスライド機構を利用して、自主製作をしたアタッチメントを取り付けることで、路肩盛土の転圧機械として作業効率の向上を得ることができたとお聞きしております。
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コンバインドローラTC6709
このローラは、昭和48年から平成5年までの約20年間にわたり現役で活躍した後、現在は、(株)工組様で運営されている教習所において、車輌系建設機械の締固め資格取得の際の実技教習に使用されています。多くの受講生に多種、多様化している締固め機械の、貴重な教育資料の一事例としていまなお、第一線で活躍しています。
このように、長年にわたり当社製品を保存使用して頂いている(株)工組様ならびに中野渡社長様に感謝をし、今後のご発展を心より願っています。
<仙台営業所:漆山>
油圧駆動系ローラの運転時の注意車両の取り扱いについて
お客様に、SAKAI製の車両をより長く御使用して頂くために、下記のような車両の取り扱いをして頂きたいと思います。
変速スイッチ 走行中の切替は厳禁
油圧駆動系ローラの運転時における注意事項
前回は作業運転時のフートブレーキの使用について、緊急用の安全対策用でありますので通常時は使用しないようにお願いいたしましたが、今回はちょっとした不注意で大きな故障の原因になるスイッチの切替操作です。
当社製品の油圧駆動ローラはおおむね変速スイッチが付いて、2段変速がほとんどです。パネル版にも亀マークとウサギのマークが入ったスイッチ表示があります。
通常の発進は、変速スイッチを低速(亀マーク)および高速(ウサギマーク)どちらかに切り替えて使用して頂きます。
これを走行中に切り替えますと油圧モータに急激な力が加わり、モータに負荷がかかり走行不良を起こす可能性があり、最悪の場合、モータの故障の原因になります。
例えば、作業を終わって回送をする場合、作業時の低速でそのまま回送をしていたが、途中でもっと速い速度で回送をしたくなり、そのまま走行途中で高速(ウサギマーク)にスイッチを切り替えたり、高速(ウサギマーク)で回送中坂道などでスピードダウンしなければならなくなり、低速(亀マーク)にスイッチを切り替えるケースなど、ローラは自動車と違い走行時のシフトダウン、アップを好みません。
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機械の故障を予防するためにも、一旦停止状態にして変速スイッチを切り替えて発進させるよう心がけましょう。