「アスファルト舗装工事施工体制研究会」提言

舗装工事施工体制の将来像を検討

国土交通省では現在、激変する経済・社会環境の中、一層の良質な社会資本の整備に向けて、どのような施工体制が最も望ましいのか、発注者サイドと施工者サイドの望ましい将来像とはどのような形で実現するべきか等を検討している。
特に舗装工事については、(1)一括下請など建設業法違反が発生しており、信頼性の回復と言う意味から、また(2)国内の建設市場が縮小局面に向かうなか、再編も視野に入れつつ技術力と採算性の確保という意味からも、望ましい施工体制の確立が急務となっている。

このような状況を踏まえ、平成14年2月、発注者、施工者および学識経験者で構成する「アスファルト舗装工事施工体制研究会」を発足させ、検討を進めてきた。そして今般、同研究会が問題点の把握、望ましい施工体制の実現等、共通認識として得られた内容がまとまった。

(資料提供:国土交通省大臣官房技術調査課建設コスト管理室)

アスファルト舗装工事施工体制研究会 提言概要

経済・社会環境が急激に変化するなか、アスファルト舗装工事における発注者サイドと施工者サイドが望ましい施工体制の将来像を共有し、あるべき姿を実現するための方策を提言

舗装工事をめぐる状況

  1. 技術者、施工機械数と比べても多く、さらに増加している舗装業者数
  2. 舗装事業量はやや減少傾向にあり、設備の稼働率が低下
  3. 繁忙・端境期の事業量の差が大
  4. 品質確保のため現場の経験にもとづく特有の技術が必要

舗装工事の課題

発注者側の問題

  1. 施工能力の低い業者に発注されるケースがあり、一括下請負になりやすい
  2. 施工能力を施工実績のみで評価するのではなく、発注者自身が業者の施工能力を見極める必要

施工者側の問題

  1. 舗装業者数の過剰が過当な価格競争を招き、充実した施工部門を有する企業の競争力が相対的に低下
  2. 直接施工から子会社化、外注化が進み、元請、下請の連携が不十分な場合には施工効率や品質の低下の懸念

望ましい施工体制

工事現場の施工体制

  1. 技術者、技能者、作業員、施工機械、資材の適切な配置・調達、特に優秀な技術者と能力の高い技能者の確保と両者のチームワークが大切
  2. 直営施工であれば問題が少ないが、施工を外注する場合には元請会社が完全に責任を負える管理体制を敷くこと

舗装会社の体制整備

  1. 良好な施工体制をとれる業者が競争において生き残れる仕組みが必要
  2. 直営施工部門を有する会社はできるだけその体制の保持に努めるとともに、協力会社等を活用する場合には恒常的な協力関係にある会社が望ましい
  3. 舗装会社としての技術力の保持、向上の観点から一部の工事で直営施工することが望ましい

望ましい施工体制の実現に向けた方策

発注者側の方策

  1. 施工者の体制の普段からの把握
  2. 技術力を評価できる発注方式の導入
  3. 業者選定の段階での施工能力の評価
  4. 現場の点検の実施
  5. 年間を通じた工事の平準化

施工者側の方策

  1. 発注者への施工体制の情報提供
  2. 施工体制の整備
  3. 工事現場の施工体制の適正化
  4. 技術の維持・向上
  5. 地域貢献

第1章 舗装工事をめぐる状況

舗装業者数

舗装業者は、大臣許可、知事許可を合わせると9万社以上に及び、舗装事業費の減少傾向にも関わらず、依然として増加している。
このことは、舗装工事において一括下請負という法令違反が行われる背景にもなっている。

舗装事業量

舗装工事の事業量は、近年やや現象傾向にある。今後、さらに減少する可能性も大きく、舗装事業に関わる企業においては設備や人員等の大幅な合理化、場合によっては業界の再編も必要となろう。
旧西ドイツでは、1970年代に舗装率100%をほぼ達成し、舗装の事業量が急減した。
その際、複数の企業が共同で合材プラントを再編したが、プラントの基数の減少の割合は製造量の減少割合を上回り、合理化と生産性向上を同時に実現した。
ドイツの事例は、今後の施工体制の再構築の参考になる。

繁忙・端境期

繁忙期と端境期の差が、設備等の年間稼働率を低下させる要因となるとともに、舗装会社が、施工部門を保持し続けることを困難にし、外注に頼らざるを得ない状況を作り出している。

舗装技術の特性と現場の施工管理

安全で円滑な道路交通を確保するには、路面の性能を保持する必要があり、舗装の施工の良し悪しは完成時の出来栄えのみならず供用後の長期的な耐久性に影響し、ライフサイクルコストが大きく異なることになる。

工事現場における一般的な施工体制は、管理体制=現場条件で異なるが、一般的には主任(監理)技術者の他に複数の担当技術者が配置されている。
施工班=標準的には職長以下10数名の技能者、作業員で施工班が編成される。

このような舗装技術の特性から、施工を円滑に行うためには、技術者と施工班の連携が極めて重要である。
また、企業において特殊な技術を要する舗装技術を保持、向上させていくためには、施工を通じて得たノウハウを社として蓄積する必要がある。

  • 一般的な管理体制の例

    「一般的な管理体制の例」

アスファルト舗装工事の施工の特徴

  • アスファルト舗装工事の施工の特徴
  1. 使用材料
    • 主要な資材としてアスファルトを使用するのは28業種のうち、防水工事と舗装工事のみである。アスファルトは熱可塑性の材料であり、加熱した状態で使用することが他の土木資材と大きく異なる。
    • 舗装骨材は、強度、形状、耐久性だけでなく、アスファルトとの付着性、加熱抵抗、すべり抵抗性等他の分野では問題にならない性状が必要であり、その可否の判定は実績や専門知識が必要。
  2. 熱の要素
    • アスファルト混合物(加熱混合物)は、混合温度、運搬温度、敷均し温度、締固め温度にそれぞれ適正な温度範囲があり、その幅は非常に狭く、アスファルトの種類、針入度、混合物の種類等により異なり、専門知識と高度な応用能力が必要。
  3. 要求される高度な性能
    • 工事の成果品として舗装には、疲労破壊輪数、塑性変形輪数、平坦性、浸透水量などの一定レベルの性能が要求され、これを満足させる専門知識と高度な応用能力が必要。
  4. 施工機械の選択
    • ローラのようにごく平凡に見える機械でも、その種類は多く、その組み合わせは混合物の温度、路面の使用目的(透水性等)、要求される平坦性、締固め度、道路の幅員、勾配・線形、施工時期等で異なるなど豊富な経験と専門知識が必要。
  5. 品質管理
    • 支持力の大きさや均一性に対してきびしさが要求される。
    • 品質管理試験の種類や数が多く、試験の実施と結果の判断には専門知識と高度な応用能力が必要。
  6. 出来形管理
    • 出来形管理の項目、頻度、管理限界は検査基準、施工能力、過去の施工実績を考慮して受注者の現場技術者が決めなければならない。
    • 出来形の管理はmm単位の高い精度を要求される。

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